最近の研究成果(Summary of Research Results)
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超巨大磁気抵抗(colossal magnetoresistance CMR)効果を示すペロブスカイトマンガン酸化物は、高温超伝導を発現するペロブスカイト銅酸化物とともに、従来型のバンド理論の理解を超えた特異な物性を示す強電子相関系物質群を形成しており、その異常物性の解明は、理論及び実験の立場から広範に行われている。層状マンガン酸化物は、MnO2二重層が、それを隔てる絶縁層とともにc軸方向に交互に積層した異方的な結晶構造を有し、その異方性が、強磁性金属・常磁性絶縁体(FM-PI)転移やCMR効果に強く反映されている。我々は、CMR型層状マンガン酸化物単結晶を用いて、FM-PI相転移点近傍での熱伝導、熱膨張、弾性定数及び熱起電力を温度及び磁場の関数として精密に測定し以下の事を明らかにした。
<層状マンガン酸化物の異常フォノン物性の研究>
1.
層状マンガン酸化物が、 超巨大磁気抵抗効果を発現するFM-PI相転移点近傍で、巨大熱磁気効果、巨大磁歪効果及び巨大磁気弾性効果を示すことを発見した。
2.
フォノン伝導と格子歪みの関係に着目し、局所的ヤーンテラー効果の不活性な層状マンガン酸化物の熱伝導とCMR型最適ドープ試料の結果を比較した。その結果、3価と4価のマンガンイオンをそれぞれ含むMn3+O6八面体とMn4+O6八面体のつくる局所格子歪みの不均一性とキャリアのホッピングに伴う動的局所格子歪み(動的ヤーンテラー効果)がフォノン伝導の散乱中心になっていることを示した。すなわち、金属化(または磁場印加)によりキャリアが遍歴的になり、格子の不均一性が弱まったことが、金属状態でのフォノン伝導の増大や巨大熱磁気効果の起源であることを明らかにした。
3.
格子定数を変化させた単結晶試料の熱膨張や磁歪を系統的に測定することにより、絶縁体金属転移やそれに付随したCMR効果は、ヤーンテラー効果に伴う異方的格子歪みではなく、体積歪みに付随したポーラロンの非局在化に関係することを明らかにした。
4.
フォノン熱抵抗が磁化の2乗でスケールされ、その比例定数がeg電子の軌道自由度を反映している。すなわち、熱的CMR効果がeg電子の軌道状態と通じて磁化容易化軸と密接に関係することを見出した。
5.
磁場誘起の絶縁体金属転移を示す層状マンガン酸化物の残留磁気歪み及び残留磁化の緩和現象の研究を行った。磁歪の緩和は、ヤーンテラー型の軌道・格子相互作用と二重交換相互作用の競合の結果起こっていると考えられ、CMR効果の起源や相分離状態とも関連がある。
<層状マンガン酸化物の不純物効果の研究>
6.
層状マンガン酸化物の不純物効果(クロムイオン置換効果)に対する磁気的、電気的及び熱的特性の研究を行い、eg電子の軌道欠陥による、格子、磁気構造及び電子状態に及ぼす特異な効果を見出した。
<Pr247系ペロブスカイト銅酸化物における超伝導性の研究>
7.
金属的2重鎖を有するPr247系ペロブスカイト銅酸化物において、還元熱処理を行うことにより、超伝導を発現することを発見した。ホール効果の測定から、電子系の超伝導であることが示唆さており、CuO2面が絶縁体であることを考慮すると、2重CuO鎖の超伝導である可能性が高いと考えられる。