最近の研究成果(Summary of Research Results)

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2006-2007科研費報告書概要.pdf へのリンク


ペロブスカイト型Mn酸化物は超巨大磁気抵抗(CMR)効果、強磁性金属・常磁性絶縁体(FM-PI)転移、電荷整列相転移等の多彩な物性を示す事が知られている。バンド幅の狭い系の示す一次転移型のCMR効果やマンガン酸化物の相図の統一的理解のためには、相分離モデルがより有効であると考えられる。また、マンガン酸化物の不均一な常磁性相(短距離のFMクラスターやCOクラスターが常磁性マトリックスに存在する状態)をグリフィス相の枠組みで理解することにより、巨大磁気応答の物理を捉える理論的なアプローチもある。

   

 

 1.層状マンガン酸化物単結晶の残留磁気抵抗、磁歪及び磁化の緩和現象の研究 磁場誘起型絶縁体・金属転移を示す層状マンガン酸化物単結晶の残留磁気抵抗、磁歪及び磁化の緩和現象の研究を行った。今年度は磁歪の圧力効果の研究を中心に行った。磁場誘起の強磁性金属転移を起こす2T付近で、c軸方向に大きく収縮し、a軸方向にわずかに伸張する。この体積の減尐は、局在しているJT型の格子ポーラロンが遍歴状態になったことによると考えられる。圧力を印加することにより、強磁性金属へ転移する臨界磁場が抑制される。これはeg電子を介した二重交換相互作用が強まったことを示唆する。面内に磁場を印加した場合も同様な振る舞いを示す。磁場をゼロに戻しても、残留磁歪が残るので相分離状態であることがわかる。残留磁歪の緩和曲線は、単純な指数関数ではなく、残留磁気抵抗及び磁化の緩和と同様に拡張指数関数で良く記述されることがわかった。


2.層状マンガン酸化物単結晶の磁歪のステップ現象の研究 近年、磁場誘起のメタ磁性転移を示すマンガン酸化物系において、非常に鋭い磁化のステップが低温領域で報告されている。我々は、このステップ状の強磁性金属転移の起源を探るために、磁場誘起型絶縁体・金属転移を示す層状マンガン酸化物単結晶の磁歪のステップ現象の研究を行った。
① この磁歪は、強磁性金属転移を伴う一次相転移であり、転移幅は、数ミリテスラ程度の鋭い変化を示す。試料の瞬間的な温度上昇は15Kにも達する。(巨大磁気熱量効果)
② ステップの大きさは冷却磁場の増加とともに減少し、、冷却磁場が1.7T以上ではステップ状の変化は消える。



3.マンガン酸化物の置換効果の研究(Cr置換効果、多電子ドープ効果)
層状マンガン酸化物に対するCr置換効果や多電子ドープ型マンガン酸化物の研究を行った。特に、Cr置換による軌道欠陥は、格子・磁性及び輸送特性に特異な効果をもたらすことがわかった。また、Ce置換により、二電子ドープ型のマンガン酸化物が合成可能であり、一電子ドープ型の結果とキャリア濃度をスケールすることにより輸送特性の結果も類似することがわかった。


2002-2003科研費報告書概要.pdf へのリンク

超巨大磁気抵抗
colossal magnetoresistance CMR効果を示すペロブスカイトマンガン酸化物は、高温超伝導を発現するペロブスカイト銅酸化物とともに、従来型のバンド理論の理解を超えた特異な物性を示す強電子相関系物質群を形成しており、その異常物性の解明は、理論及び実験の立場から広範に行われている層状マンガン酸化物は、MnO二重層が、それを隔てる絶縁層とともにc軸方向に交互に積層した異方的な結晶構造を有し、その異方性が、強磁性金属・常磁性絶縁体(FM-PI)転移やCMR効果に強く反映されている。我々は、CMR型層状マンガン酸化物単結晶を用いて、FM-PI相転移点近傍での熱伝導、熱膨張、弾性定数及び熱起電力を温度及び磁場の関数として精密に測定し以下の事を明らかにした。

<層状マンガン酸化物の異常フォノン物性の研究

1.        層状マンガン酸化物が、 超巨大磁気抵抗効果を発現するFM-PI相転移点近傍で、巨大熱磁気効果、巨大磁歪効果及び巨大磁気弾性効果を示すことを発見した。

2.        フォノン伝導と格子歪みの関係に着目し、局所的ヤーンテラー効果の不活性な層状マンガン酸化物の熱伝導とCMR型最適ドープ試料の結果を比較した。その結果、3価と4価のマンガンイオンをそれぞれ含むMn3+O6八面体とMn4+O6八面体のつくる局所格子歪みの不均一性とキャリアのホッピングに伴う動的局所格子歪み(動的ヤーンテラー効果)がフォノン伝導の散乱中心になっていることを示した。すなわち、金属化(または磁場印加)によりキャリアが遍歴的になり、格子の不均一性が弱まったことが、金属状態でのフォノン伝導の増大や巨大熱磁気効果の起源であることを明らかにした。

3.         格子定数を変化させた単結晶試料の熱膨張や磁歪を系統的に測定することにより、絶縁体金属転移やそれに付随したCMR効果は、ヤーンテラー効果に伴う異方的格子歪みではなく、体積歪みに付随したポーラロンの非局在化に関係することを明らかにした。

4.        フォノン熱抵抗が磁化の2乗でスケールされ、その比例定数がeg電子の軌道自由度を反映している。すなわち、熱的CMR効果がeg電子の軌道状態と通じて磁化容易化軸と密接に関係することを見出した。

5.        磁場誘起の絶縁体金属転移を示す層状マンガン酸化物の残留磁気歪み及び残留磁化の緩和現象の研究を行った。磁歪の緩和は、ヤーンテラー型の軌道・格子相互作用と二重交換相互作用の競合の結果起こっていると考えられ、CMR効果の起源や相分離状態とも関連がある。

<層状マンガン酸化物の不純物効果の研究>

6.        層状マンガン酸化物の不純物効果(クロムイオン置換効果)に対する磁気的、電気的及び熱的特性の研究を行い、eg電子の軌道欠陥による、格子、磁気構造及び電子状態に及ぼす特異な効果を見出した。

Pr247系ペロブスカイト銅酸化物における超伝導性の研究>

7.        金属的2重鎖を有するPr247系ペロブスカイト銅酸化物において、還元熱処理を行うことにより、超伝導を発現することを発見した。ホール効果の測定から、電子系の超伝導であることが示唆さており、CuO2面が絶縁体であることを考慮すると、2重CuO鎖の超伝導である可能性が高いと考えられる。